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マボロシぱんてえ(7話)

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第7話 父と娘

明智吾郎。

明智理奈の父であり、ヤクザやストーカー等の依頼も受ける悪徳探偵。妻には逃げられ、家にも滅多に帰らない社会不適合者であり、理奈が最も嫌う人物。

その最も嫌う男が、自分の学校の廊下でタバコを吸っているのを見つけてしまい、愕然とする理奈。

彼は、学園長から最近校内で騒ぎとなっているマボロシぱんてえの正体を明らかにするよう依頼されていたのだ。

理奈は父にマボロシぱんてえは騒ぎを起こしているのではなく、事件を解決してくれている。プーさんの凶行を阻止した一件はニュースでも取り上げられて知っている筈だと訴えるが、父は「正しい事をしているなら正体を隠す必要は無い」「格好からして変質者」と突っ撥ね「そもそも、無償の正義など胡散臭い」とマボロシぱんてえの行動に裏があると決めつける。

そんな父親への反発が強い正義感となって事件を解決しているのだと言ってやりたい理奈だったが、正体を明かす訳にもいかず、またこの父親に対して何を言っても無駄だと諦める。

その後、吾郎は校内の至る所で取り調べと称して少女のパンツチェックをしたり身体を触るなどの行為を繰り返し、それを娘に見つかって咎められると「これは職業上の役得である」「飲食店の従業員が賄いの食事を食べる事ができる様に、警察や探偵は取り調べで良い思いが出来るものなのだ」「大人になればわかる」との持論を展開して、娘の主張など何一つ聞こうとしなかった。

理奈はマボロシぱんてえとして父を倒すべきなのか、娘として父を説き伏せるべきなのか悩むが、父を討っても父はその行為を暴力事件として「やはりマボロシぱんてえは危険な不審人物だ!」と宣伝する材料とするだろうし、父親に何を言っても聞いてくれないのは誰よりも理奈が分かっていた為、父親の「取り調べ」を監視して横暴な行いを、一つ一つ制止していく事しかできなかった。

そんな父が理奈のクラスの水泳の授業を「多くの容疑者の体型を一度に確認できる」と言って見学しに来たのは、厄介者が目の届く場所に居るという意味ではありがたかったとも言えた。

しかし、その日の水泳の授業に現れた厄介者は吾郎だけではなかった。

近所でも有名な巨漢の知恵遅れ「厄介者(ランバー)」ラル。

何をするか分からない知恵遅れが巨体と怪力を有している事で、付近住民からあからさまに避けられていた男だが、普段は学校など他人に敷地に侵入するなどの不法行為をする事も無く、もしそうであれば厄介者ではなく無法者と呼ばれていただろう。

そのランバー・ラルが学校のプールに立ち入り、止めに入った教師を殴り、殴られた教師は一撃で首がありえない角度に曲がり動かなくなる。そんな町の人々が危惧していた事が、今ここで現実となった。

生徒達は一目散に逃げだし、吾郎は裏社会を生き抜く探偵としていつでも逃げる事が可能な安全圏から全てを観察するモードに入るが、プールで泳いでいた生徒は何が起きているのか気付いていないようで、プールに入ろうとするラルの行動を察知した理奈とジャッキーちゃんは級友に警告を発する。

しかし、集団から遅れていた為か最初から彼女が狙いだったのか、ペコちゃんこと刃根路桃菓(ばねろ・ももか)が捕まり、彼女を助けようとしたユカも捕らえられる。

ラルは「俺とも赤ちゃんを作ろう」「そうすれば家族になれる」と言って下半身を露出させ、ペコちゃんの股間を舐め始める。

ユカはペコちゃんの母親が障碍者福祉施設のボランティアに熱心で、娘であるペコちゃんにも活動を強制していた事から、ラルとの接点があったのではと推測。

更に、4月にペコちゃんが出産した為に、母親もペコちゃんも子育てに忙しいはずであり、今はボランティア活動は中断されてラルとの接点が無くなっているのではないかと考える。

SEXの授業はの目的の一つは、妊娠、出産、子育てをクラス全体で体験する為であり、SEXの授業自体は月に一度だが、それは週に一度ある保健体育の授業の一部で、保健体育のある日には赤ん坊を伴って登校し、子育ての苦労と重要性を学ぶ。クラスにはペコちゃん以外にも5人の子持ち学生が存在しており、ユカ自身も片親と言う環境でなければ避妊を考慮される事なくSEXの授業を受けていただろう。

ペコちゃんはクラスどころか学年で一番身体が小さく、初めてSEXの授業を受けた日に「こんなに小さい身体でも、先生のデカいちんこが入る」と、一番に目を付けられてから、「小さくとも妊娠できる」「妊娠中のSEXの注意点」「臨月前後の注意」「小さくても赤ちゃん安心の母乳マッサージ」等と事ある毎に実例として選ばれており、つい先日も「授乳時SEXの注意点」として、乳幼児揺さぶられ症候群の危険性を説きながら、安全な方法で赤ちゃんに授乳させながらのSEXをしていた。ついでに、先生もペコちゃんのおっぱいを吸っていた。

先生によると、身体が小さい為にNG行動をするとその影響が大きく出る為に、授業として分かりやすい。ここまで小さい子は中々居ないので、お前たちは分かりやすい授業を受けられる事をペコちゃんに感謝した方がいい。と、言った説明をしていたが、正直よく分からない理屈だとユカは思う。

ユカは、ラルの暴走は自分と普通に接してくれたペコちゃんの行動を自分への好意と錯覚し、それなのにペコちゃんに子供が産まれた事で疎遠になってしまった事が原因ではないかと結論付けたが、その推論が正しいか間違っているかを知る術はないし、仮に正しかったとすれば、ユカ自身は安全かもしれないがペコちゃんは執拗に狙われる事になるだろうし、体の小さい相手に怪我をさせる事なく性行為をするプロのSEX教師とは異なり、歪んだ愛情を持つ馬鹿力の知恵遅れは性行為によりユカに怪我をさせるであろう事も容易に想像できた。

そんなピンチの状況で、級友(主にユカ)を助ける為にジャッキーちゃんがラルの前に立ちはだかる。

ジャッキーちゃんを見直すユカだったが、

水中では酔拳の命である緩急の差のある動きが、全て緩い動きとなってしまい、簡単にやられてしまうジャッキーちゃん。

今まさにペコちゃんを犯そうとするラルを必死で阻止しようとするユカだったが、無力なユカはジャッキーちゃんとは異なり相手にもされない。

しかし、そこにマボロシぱんてえが現れ「担任教師とジャッキーちゃんのおかげで間に合った」「今回のヒーローはあの二人だ」と告げるとプールに飛び込み、

潜水したままラルに接近したマボロシぱんてえは、その勢いに水面へと引き寄せられる浮力も加えて突進し、イルカが水面のボールを弾き飛ばすかの如くラルを吹き飛ばす。

担任教師やジャッキーちゃんの無事を確認し、ユカとペコちゃんに二人を任せるマボロシぱんてえだったが、全てを見ていた吾郎に呼び止められる。

吾郎は「マボロシぱんてえのねえさんよ。どこの誰かは知らないけれど、身体をみんなに見せてたら親が泣くぞ」と自分の上着をマボロシぱんてえに着せ、「あんたが手ごわいのは良く分かった」「これじゃ、調査が長引いて元が取れなくなりそうだから、俺はこの件から手を引く事にする」と語る。

更に「ただの厄介者だったランバー・ラルが、こんな事件を起こしてしまったのは、誰かが最後の一押しをしたからに違いない」「学園長には気を付けろ」「この俺を雇うような奴は、とんでもない悪党しか居ない」と言い残して、吾郎は去って行くのだった。

理奈は父親が自分の正体に気付き、依頼人を裏切ってまで自分を守ろうとしているのだと察し、そんな父の後ろ姿に初めて親の温かみを感じるのだった。

次回、第8話 「怪物がきた日(前編)」

©柴田亜美

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